Velvet Sky
Paint me a wish on a velvet sky,
You demand the answers
but I don't know why
「私は緑」
問題のあるレストラン 第4話
結美「大学では全国展開する飲食チェーンのマーケティングに関して、研究を重ねてきました。5,000件以上の立地条件のデータを集めることで」(面接官Dの表情を見て言葉と表情が止まる)
面接官A「ハイ、わかりました」
結美「え?」
面接官A「以前勤めてらした会社での実績を教えて下さい」
結美「・・・はい。(興味なさそうな面接官Dの方を見る)」
面接官A「どうしました?」
結美「・・・実績ありません」
面接官A「ありません・・・か。(失笑)」
面接官B「・・・(苦笑)」
面接官C「東大なのにねぇ・・・はあ」
面接官B「困りましたねぇ」
結美
「起業しようと思ってたんです。ノウハウとコネを手に入れたら、退社して起業しようと思ってたんです。
でも実際入ったら、ノウハウどころか、あたまでっかちの使えない勉強バカって、そう思われてて」
面接官A「どうしてそんな誤解を受けたんでしょう」
結美「誤解じゃないんです私基本使えない人間なんです」
面接官D「じゃあ・・・君は何なの」
結美
「私は・・・私は、・・・『緑』です。
幼稚園の時に、セーラームーン・・・セーラームーンっていうアニメがありました。園庭でよくその”ごっこ”をしてたんですけど、みんなは大体セーラームーンとか、セーラーマーキュリーとかを選んで、私はいつも最後まで残ったセーラージュピターで、セーラージュピターのイメージは緑でした。色には順番があったんです。女の子が、赤とか、ピンクとか色分けされたものを分ける時、私はいつも緑を選ぶ係でした。選ぶっていうか、選んだフリで緑を取るんです。素直に、赤とかピンクを選べる人が不思議でした。『あなた人生何回目?』って思いました。『私まだ一回目だから、赤が欲しい』って言えない。アニメのセーラームーンは敵と戦ってたけど、女の子たちの”ごっこ”のセーラームーンはセーラームーン同士で戦うんです。大人になって、それを別の言葉で知りました。『女の敵は女だよ』って。私は、始めからそこで負けていたから、他の娘が、ファッションとか恋とか選ぶ時、私は勉強を選びました好きじゃなかったけど残ってたから勉強を選びました。大学に受かって、友達とか家族とかみんな褒めてくれました。だけどそこにはいつも『女の子なのに変わってるよね』っていうニュアンスが付け加えられてました。会社に入って、やりたいことを頑張ろうって思ってたら、テプラの研修があって、どうしてか女子だけテプラの研修があったんですけど、同期の娘が言いました。『男は勝てば女に愛されるけど、女が勝ったら男に愛されなくなる。女は、勝ち負けとか放棄して、男に選ばれて初めて勝利するんだ』あれ!?じゃあ私、一生勝てないじゃんて思いました。だって『緑』だもん私って思いました。赤もピンクも緑も全部黒ければいいのに、黒いセーラームーンがいたら良かったのにって・・・」
面接官D「続けて」
結美
「それで私・・・そういう自分を多分見たくなくて、色んなモノを人を、見下したり、見上げたりしていたんですけど、最近、レストランのバイトを始めて」
TVドラマ「 問題のあるレストラン 」 第4話
2015年2月5日放送
新田結実 (二階堂ふみさん) の台詞
©Fuji Television Network, inc. All rights reserved.
脚本:坂元裕二さん (東京ラブストーリー 他)
第4話演出:加藤裕将さん (ライフ 他)
さて、第3話の終盤で千佳にボロクソに言われて出て行ったままだった結実ですが、やはり第4話はこの人のストーリー。東大出身の割には男性中心の仕事場をすぐやめちゃって、その後再就職できなくて苦しんでる女の子が結美です。で、色々あって、企業の面接を受けに行くんですが、その際のやりとりと長台詞がこちら。
このドラマは、非常に強く「ジェンダー」を訴えています。女性とは何なのか、女性の社会的役割とは何なのかということですね。女性というだけでなぜこの社会では生きにくいという状況が発生するのか、そんなところです。自分も男性と同じようにバリバリ仕事したかったのに、なんかもうスタートから扱いが違いすぎるみたいなことに結美はショックを受けてしまっています。
で、そんな結美とは対照的なライバル、川奈藍里(高畑充希さん)というキャラも出てきます。こちらはこの社会に存在するジェンダーを受け入れ、それを逆手に取ってその役割に徹するように生きる存在です。
結美というキャラはそのライバルを意識し、嫌いながらも恐らく「自分もそうなれたら良いのに」と思っていて、でも絶対なれないから苦しんじゃうみたいな女の子ですね。で、東大卒で学歴が高い割には仕事ができないというのはそうなんですが、それがただの変なプライドとかではなくて、引っ込み思案で控えめでコンプレックスの反動として他の人とは違う所で頑張って、そういう自分を作ってきたけど、社会に出たら結局負けてた。みたいなことを吐露するのが上記の面接シーン。
そこまで意識するのはおかしいよって思うかもしれないし、極端な例かも知れませんし、個人的に女性の立場や権利をラディカルに訴えるフェミニストは嫌いです。でも、こういうことに対してストレートな違和感をぶつけながら表現するっていうのもなかなか大事だと思う訳です。
で、レストランのバイトの話を始めるところで、そのままカットして終わらせてしまうのはうまい演出ですね。ある程度想像できそうなところはもう視聴者に任せるというか。
で、今回やはり二階堂ふみさんの演技が光ってます。そして高畑充希さんの闇を抱えた小悪魔、みたいな雰囲気もすごいですね。
ちなみに、結美はこの後の流れでも全然救われることなく、さらに恋愛耐性がないからか変な男にひっかかったりしてます。ずっと真っ黒な服を着てて、「喪服ちゃん」とか言われてたのに、ポジティブになったらいきなり真っ赤なコートを着ちゃったり、でもそれが変な男に浮かれてるだけという。しかもその後、レストランの最初の成功をぶっ壊す大失態を演じて去って行きます。・・・この後どうなることやら。
男だから、とか女だからっていうことにとらわれない生き方をしてみたいものですね。
ちなみに、第4話は最初の方でみんなで料理しながら、主題歌(きゃりーぱみゅぱみゅさんの「問題ガール」)に合わせてSTOMPみたいなことをするシーンが楽しいです。そのシーンはエンディング映像にもなってました。