Velvet Sky
Paint me a wish on a velvet sky,
You demand the answers
but I don't know why
レディジュエルペット 第25話
「スマイルランチはレディのたしなみ」
子供向けアニメのジェンダーという視点
土曜の朝にテレビ東京でやっているアニメ、レディジュエルペットです。
このシリーズは全然知らなかったんですが、すごく良いアニメなんです。ミステリアスな世界観を持ちながらも、女の子が頑張って努力して何かを成し遂げようとする、そんな健全な内容です。もちろんメインではないとはいえ、男の子も出てきます。このアニメの特徴的なところは、主要な女の子キャラに必ず男の子の「相手」がいるところですね。最近のアニメって割りとこうなんでしょうか。カップリングやパートナーとまで行かなくても、どこかお似合いの相手がいて、カップリングが既に前提になってるという感じです。
さて、その第25話、プチレディというポジションの女の子たちが、男の子たちにお弁当を作ってあげるという「課題」に挑戦します。その中で大きく描かれたのが、ボーイッシュなキャラクターのみずきちゃんでした。お相手の知的な男の子・ソアラ君にお弁当を食べてもらうシーンです。みずきちゃんはその前の夜にうなされるほど緊張してしまっています。で、何やらキャラ弁のようなものを作って行ったところ、ソアラ君はその味を褒めつつ、「ここをもっとこうしたら美味しいよ」みたいなアドバイスをくれて、最終的にはすごくうまくお弁当とみずきちゃん本人のことを褒めてみせます。非常にLOVELYなひとときです。みずきちゃんはと言うと、自分を認めてくれるようなソアラ君の優しい言葉に涙してしまいます。
さて、ここで興味深いのはこのアニメが「ジェンダー」という視点をとてもうまく、柔軟に使っていることだと思います。ジェンダーとは男女の社会的役割のことですが、それはしばしば固定観念のように一般人を締め付けてしまうものであったりもします。このアニメでも「お弁当をつくるのは女の子の役割」という概念が既にできていて、極端な見方をすればその価値観を押し付けているかのようにも見えてしまうかもしれません。しかし、このアニメが巧いのはそういう変な見方を助長することなく、「誰かのために時間と手間をかけること」ということが男女問わずいかに素敵で大事なことか、ということを語っているからだと思います。ソアラ君がみずきちゃんのお弁当にダメ出しをするだけではなく、ちゃんと改善できるポイントを指摘してあげているのは、彼自身がジェンダーの枠を超えて「料理」という嗜みを持っており、対等な関係で会話出来ているということを暗示します。なので、暗に彼はジェンダーという固定的な考え方にとらわれない、現代的で柔軟な感覚を持っているキャラクターだと思います。またその相手が普段「ボーイッシュ」なみずきちゃんであることが、このアニメにとってジェンダーがいかに柔軟なものであるか、という証拠でもあるように思います。
ジェンダーという概念は、その壁を意識するほど逆にそれに囚われてしまうことがとても多くあります。しかしこのアニメは逆にそれを肯定し、ある程度認めた上で軽々と超えてしまう、そんな技をみせているようです。
コンテ : 大原実さん (たまごっち!、ラストエグザイル~銀翼のファム~ 他)
演出 : 浅見松雄さん (家庭教師ヒットマンREBORN! 他)